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役員報酬とは?設定するためのポイントや届出の方法、注意点について解説

2025.11.05

会社設立直後や成長期にある企業の経営にとって、役員報酬の設計は「節税」と「資金繰り」の両面から極めて重要です。

特に役員賞与を会社の経費とするには、「事前確定届出給与」の届出が不可欠となります。

本記事では、役員報酬の基本的なルールから、税務署への届出方法、そして「もしミスしたらどうなるか」という具体的なリスクまでを徹底解説します。

役員報酬とは?

会社の役員に対して支払われる報酬(月額給与や賞与)を「役員報酬」と呼びます。

これは、従業員の給与と異なり、税法上「損金(税法上の費用)」として認められるための要件が非常に厳格に定められています。

このルールを無視して支給すると、その報酬が会社の経費と認められず、法人税の負担が大きく増えるリスクがあるため、正確な理解と手続きが不可欠です。

税法上の取り扱い

法人税法上、役員報酬として会社の損金に算入されるのは次の3種類となります。。

一つ目は、「定期同額給与」です。これは、「その支給時期が1ヶ月以下の期間ごとである給与で当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるもの等をいう(法人税法34①一)」と定義されています。毎月定額で支給する必要があり、原則として事業年度開始日から3ヶ月以内であれば、改定することが認められます。

二つ目は、「事前確定届出給与」です。これは、「その役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与で、そのうち所定の給与は所管税務署に事前に届出したものをいう(法人税法34①二)」と定義されています。

三つ目は、「利益連動給与」です。こちらは非上場企業において設定することは稀であるため、今回の記事では説明を省略します。

この三つのいずれにも該当しない報酬は、原則として「損金不算入」となり、会社側で法人税が課税されます。

従業員の給与との違い

従業員への給与は、基本的に全額が損金として認められます。

しかし、役員報酬は、経営者自身が金額を決定できるため、利益が多く出た期末に多額の賞与を支払って意図的に利益を圧縮し、法人税を不当に逃れることが可能です。このような「恣意的な利益操作」を防ぐ目的で、税法上の厳しい制限が設けられています。

役員報酬の金額を設定する際のポイント

役員報酬の額は、会社(法人税)と役員個人(所得税・住民税・社会保険料)双方の税金に大きく影響します。

単に「節税」だけを目的とするのではなく、会社の健全な資金繰りと、役員個人の手取り額のバランスを考慮し、トータルで最も効率的な金額を設計することが重要です。

実際に設定する際のポイントについて解説します。

会社の利益とのバランスを考慮する

役員報酬は会社の費用となるため、利益を圧縮し法人税を減らす効果がありますが、同時にキャッシュアウトを伴う固定費です。

利益を出すために報酬を過度に低く設定すれば役員個人の生活に影響が出ますし、逆に報酬を高くしすぎると、会社の資金繰りが悪化し、事業への再投資や緊急時の資金が不足するリスクもあるでしょう。

会社の安定的な事業継続を最優先に考え、向こう1年間の予測利益とキャッシュフローに基づいた適正な報酬額を設定しましょう。

所得税・住民税・社会保険への影響を考慮する

役員報酬が増額すると、個人の所得税や住民税が増えるだけでなく、社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)の負担も増大します。

特に社会保険料は、一定額を超えると保険料の上昇率が緩やかになる「等級」が存在します。

この等級をまたいで報酬を増額する際は、「増えた報酬額」に対して「手取り額がどれだけ増えるか」、そして「会社負担の社会保険料がどれだけ増えるか」をシミュレーションし、最適なバランス点を見極めることが重要です。

役員報酬の届出とは

役員に賞与を支給し、それを会社の経費とする場合、税務署に対して「事前確定届出給与に関する届出書」を提出する必要があります。

この手続きは、役員賞与の金額や支給日を事前に確定し、その情報を税務署に通知することで、後からの恣意的な利益調整を不可能にするためのものです。

役員報酬の届出が必要なケース

「事前確定届出給与」の届出が必要となるのは、事業年度の途中で、役員に対して毎月の給与とは別に、賞与として一時金を支給し、かつその金額を会社の損金として計上したい場合です。

届け出た金額と、実際に支給した金額や支給日が少しでも異なると、原則として全額が損金不算入となるため、厳密な管理が必要です。

役員報酬の届出が必要な理由

役員報酬の届出が必要な最大の理由は、税法が「恣意的な利益操作」を禁止しているからです。

もし、届出なしに賞与の支給を認めてしまうと、期末になって会社の利益が出過ぎた場合に、急に高額の役員賞与を支給して利益を減らし、法人税を低く抑えることが可能になってしまいます。

このような利益操作を防ぐために、金額と支給日を事前に税務署に届け出るという厳格なルールが課されているのです。

役員報酬の届出をしなかった場合どうなるのか

役員賞与を支給したにもかかわらず、事前の届出を怠った場合、あるいは届け出た内容と実際に支給した内容(金額・日付)が一つでも異なった場合、その役員賞与の全額が損金不算入となります。

これは、その金額に対して会社が法人税を支払わなければならないことを意味します。

例えば、100万円の役員賞与を支給し損金不算入となった場合、会社の利益は100万円増え、これに約20~30%の法人税等が課されるため、会社に重い税負担が発生してしまうのです。

役員報酬に関する税務署への届出方法

「事前確定届出給与」を損金算入するための届出は、決められた書類を作成し、期限内に税務署へ提出することが求められます。

届出の書き方や提出先、期限について解説します。

「事前確定届出給与に関する届出書」の書き方

届出書本体には、法人の基本情報(所在地、法人名、代表者名など)のほか、役員報酬の支給を決議した日と決議機関(例:株主総会)を記載します。

また、添付する「付表」には、対象となる役員ごとの氏名、役職、具体的にいつ(支給予定日)、いくら(支給予定額)を支給するのかを明確に記載します。

記載する金額、日付は、株主総会議事録などで決定した内容と完全に一致させることが必須なので気をつけましょう。

提出先と期限

「事前確定届出給与に関する届出書」の提出先は、会社の納税地を所轄する税務署長です。最も重要なのは提出期限で、以下のいずれか早い日までに提出する必要があります。

  • 株主総会などで役員報酬の決議をした日から1ヶ月を経過する日
  • その事業年度の開始の日から4ヶ月を経過する日

原則として「決議の日から1ヶ月以内」と覚えておくといいでしょう。

特に新規設立法人の場合は、設立日から3ヶ月以内(または最初の定時株主総会の日)などの特例が適用される場合があるため、顧問税理士に確認することが確実です。

事前確定届出給与の注意点

事前確定届出給与の最大の注意点は、「届け出た内容と、実際に支給した内容(金額・日付)を完全に一致させること」です。

例えば、届出額が100万円なのに99万円しか支給しなかった場合や、予定日より1日でも遅れて支給した場合、たとえ微差であっても原則としてその役員に支給した事前確定届出給与の全額が損金不算入となります。

そのため、資金繰りの変動などを見越した、現実的な金額と日付を設定することが極めて重要です。

まとめ

役員報酬は、会社の経営を左右する重要な要素です。

毎月の報酬は事業年度を通じて金額を変えずに支払い、役員賞与を支給する場合は、必ず期限内に金額と日付を届け出て、届け出通りに支給することが、法人税法上の損金として認められるための鉄則です。

このルールを正しく理解し、活用することで、会社の税負担を最適化し、健全な経営を目指しましょう。

役員報酬の設定や事前確定届出給与の手続きはリゾルト税理士法人にお任せください。

まずはお気軽にご相談いただけたらと思います。

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